JX-ENEOSバスケットボールクリニック

Webクリニック

当社が行っている、コーチ・指導者向けのWebクリニックです。

スペシャルアドバイザー高木彰氏のコーチングクリニック パート2

日本大学バスケットボール部、日本鉱業(現JXTGエネルギー)バスケットボール部のヘッドコーチ時代を経て、1994年からジャパンエナジー(現JXTGエネルギー)男女バスケットボール部の総監督に就任した高木彰氏。その高木氏が、「チームを強くするには?」ということを今一度考え、「チームを率いる指導者がはっきりとした理念を持てば、チーム力が底上げされるし、選手たちも上達する」という結論に達しました。高木氏が指導者の皆さんの悩みや疑問に答え、チームの発展に協力するクリニックです。

第11回:江戸しぐさ
雨が降れば濡れないように傘を差して歩きますが、「江戸しぐさ」に、<傘かしげ>という仕草が紹介されています。それは傘をさして歩いている人が向こうから歩いてくる人とすれ違いざま互いに傘が当たって滴が掛からないようにするため、すれ違う人と反対側へ少し傘を傾ける仕草です。

これは受け売りですが、昔々東京が「江戸」と呼ばれていた頃(1804年〜1830年)、江戸の人口はなんと推定100万〜120万人(140万人とも)だったそうで、(ちなみに同時期、ニューヨークで7万人、パリで55万人、ロンドンで86万人だったそうですから)世界最大の都市だったようです。
今の東京よりもっと狭いエリアに100万人以上もの人がひしめき合って暮らし、しかも習慣も気質も違う人や、当然方言で話す人もいて言葉が通じない人々が集まって、一言で表現するなら「ごった返していた」のでしょう。
そこで、互いにトラブルやいさかいを避けて気持ちよく暮らすためのルールやマナーが生まれたというわけです。それが当時江戸で暮らしていた人たちの知恵として“江戸しぐさ”と表現され口伝に受け継がれてきました。<傘かしげ>はその中の一つです。

ところが、最近雨の日に傘を差して歩いていると、傘の先が頭や肩に当たることが実に多いことか。向こうから二人並んで歩いてきます。傘をさしていなければ三人ほど通れそうな道ですが、傘をさしていますからそのぶん狭く感じるような歩道です。
私は当然向こうが少しでも縦になってくれれば通れそうだと思って傘を傾けていると、二人連れは話に夢中なのかこちらに気付かず、傘の先が頭にコツンと当たります。頭を保護するものが少なくなってきた私としては直接的な衝撃を受けます。先がとがっていてこれが結構痛い。ぶつけた衝撃は多少あると思うのですが、まったく意に介さない。ムカッとする瞬間です。少なくとも「ごめんなさい」という一言があれば「まー、仕方がないな」と思いながら「いいえ、どういたしまして。こんな頭を突き出していた私が悪いのですから」(これはこの江戸しぐさの中にある、<うかつあやまり>)とは言わないと思いますが、「いえいえ」と軽く会釈くらいはしたと思います。「ごめんなさい」とい言葉が出てくれば、痛いけれど「なんだ!?」とい感情にはなりません。
(ちなみに<うかつあやまり>と言うのは、人に足を踏まれたとき、「痛いじゃないか!気を付けろよ!」ではなく「こんなところにうかつに足を出していてごめんなさい」と言葉に出さなくてもそんなそぶりを見せることでいさかいは避けられる、というのが「うかつ(迂闊)あやまり」だそうです。粋な大人の解決法ではありませんか。)

昨年の東日本大震災後、日本が一丸となって復興に向かって歩きだしたとき、 “絆”(断つことができない人と人の繋がり)という言葉がブームになりました。昨年の12月に日本漢字能力検定協会から2011年を表す漢字として“絆”が発表されました。その背景には日本が震災や自然災害等で支援の輪が広がったことがあるようで、「繋がって生きていこう」という願いも込められているのだそうです。
そんなことを考えると「江戸しぐさ」にある“傘傾げ”“うかつあやまり”“肩引き”“拳浮かし”などという仕草はまさに人と人の繋がり“絆”を太くするための気遣いだろうと感じます。
スマートフォンやゲーム機の画面に夢中で人にぶつかったり、混んでいる乗り物で自分が立って作業するスペースを死守して奥に詰めなかったりと、まわりの人への気遣いが希薄になった感じがするご時世です。もう一度この“絆”を本当の意味で見直す必要がありそうです。
昨年3月に起こった東日本大震災の恐怖は、バスケットボールを志している子供たちの心の奥底にも深い傷を負わせていると思います。彼らに笑顔を忘れないで欲しい。日本中が一つになることの大切さを大勢の人たちが唱えてきましたが、時が過ぎていくにしたがって記憶の深い所に押し込まれてしまったように感じます。この「江戸しぐさ」を通して人々がもっとまわりへの気配り、他人への思いやり、感謝の気持ち、等々。世界中から賞賛された「日本人の心の強さ」をもう一度思い出し、笑顔で溢れるような日本にしたいではありませんか。

バックナンバー
第12回:聞くは一時の恥、聞かざるは一生(末代)の恥じ
第11回:江戸しぐさ
第10回:世界へ羽ばたけ!!
第9回:指導者と選手の関わり【キーワードは「何故」】
第8回:危険な「ながら歩き」
第7回:諦めない心
第6回:叱るか怒るか
第5回:スポーツマンシップ
第4回:母子のコミュニケーション
第3回:空気を読む
第2回:万全の準備
第1回:個の役割
はじめに:「子供たちの個性を伸ばすために!」
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高木 彰氏プロフィール
高木 彰氏
1949年 1月22日生まれ 東京都出身
1971年 日本鉱業株式会社(現:JXTGエネルギー) 入社
1978年 現役引退後 同社バスケットボール部アシスタントコーチ 就任
1979年 日本大学バスケットボール部ヘッドコーチ就任
(全日本学生バスケットボール選手権大会  3回優勝
 関東男子学生バスケットボールリーグ戦  3回優勝
 関東男子学生バスケットボール選手権大会 2回優勝)
1986年 日本鉱業(現JXTGエネルギー)バスケットボール部
ヘッドコーチ 就任
(全日本総合バスケットボール選手権  2回優勝)
1994〜
1998年
ジャパンエナジー(現JXTGエネルギー)男女バスケットボール部 総監督 就任
1998〜
2003年
バスケットボール女子日本リーグ機構 理事・広報部長
2003年〜 日本文化出版(株)月刊バスケットボール技術顧問
2004〜
2008年
実業団男子バスケットボール ヘッドコーチ
2009年〜 JBAエンデバーWG委員
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