2008年9月17日 第79回 都市対抗野球大会
~新日本石油ENEOS野球部13年ぶり9度目優勝への軌跡~

第79回 都市対抗野球大会
【三回戦】 9月6日(土)18:00~ 新日本石油ENEOS 1 対 0 JFE東日本

宮澤健太郎キャプテンがファウルグラウンドで左手を上げ、打球がグラブに収まると、スタンドからは大きな歓声が沸き起こりました。虎の子の1点を守り切ってJFE東日本を撃破。わがENEOS野球部は、1996年以来12年ぶりのベスト4に進出しました。

先発の木戸投手先発の木戸投手

第79回都市対抗野球大会は9日目。全国各地の予選を勝ち抜いて大舞台に立った32チームも8チームに絞られ、ここからは黒獅子旗獲得に向けてさらに厳しい戦いが繰り広げられるはずです。ENEOS野球部も、エースの田澤純一投手が4日の二回戦で158球完投しているため、この試合は他の先発投手で勝利を目指します。その大役に大久保秀昭監督が選んだのは、東芝から補強した木戸一雄投手。昨年、東芝が6度目の都市対抗優勝を果たした際に胴上げ投手となった頼れる右腕です。大久保監督のゲームプランは、木戸投手で試合の流れを作り、ベテランの廣瀬繁、清見賢司両投手をつないで終盤までリードを保ち、8回から田澤投手を投入して逃げ切ろうというもの。そのためには、打線の援護も必要です。ENEOSの後攻でプレイボールがかかります。

1回表、木戸投手はこの大会初登板にもかかわらず、丁寧なピッチングで無難に立ち上がります。その裏、二番の平馬淳選手(東芝から補強)が四球を選び、坂下真太選手のセカンドゴロの間に二塁へ進みましたが、四番の池辺啓二選手もセカンドゴロに討ち取られ、先制点を奪うことはできませんでした。2回裏も宮澤選手にヒットが飛び出しますが後続が倒れると、直後の3回表にはピンチが訪れます。簡単にツーアウトを取ったあと、慎重に攻めた結果フォアボールを出すと、盗塁と内野安打で一、三塁とされます。しかし、木戸投手はキレのあるストレートで二番打者を三振に斬って取り、このピンチを切り抜けてくれました。このあとは互いにランナーを出すものの得点圏に送れず、静かな展開のままで4回を終えます。

二番手の廣瀬投手二番手の廣瀬投手

次のチャンスをつかんだのもJFE東日本でした。5回表にワンアウトからヒット。木戸投手は次の打者を三振に討ち取りますが、一番打者の落合成紀選手を迎えたところで、大久保監督は廣瀬投手にスイッチします。落合選手は3年続けてドームで本塁打を放っているスラッガーで、勝負強さにも定評がある左打者です。ここは左腕の廣瀬投手で万全にというリレーでしたが、慎重に攻めてフォアボール。しかし、廣瀬投手は続く二番打者をピッチャーゴロに討ち取ってピンチを脱しました。その裏、ENEOSも一死一、二塁のチャンスを作りましたが、JFE東日本の投手も必死です。平馬選手、坂下選手が連続三振に倒れて得点はなりません。

三番手の清見投手三番手の清見投手

すると、6回表も大きなピンチに見舞われます。先頭打者に二塁打を許し、続く四番打者からは三振を奪いますが、六番打者にもセンター前に落とされて一死一、三塁。大久保監督は、ここで三番手に清見投手を投入すると、三振、ピッチャーフライで期待に応えてくれます。特にピッチャーフライはマウンド後方の微妙な位置に上がりましたが、清見投手は野手を制して自らキャッチ。選手たちの勝利への執念が垣間見られるプレーでした。その裏、先頭の池辺選手に待望の初ヒットが出ましたが、二死三塁で平田大門選手がライトフライ。両軍無得点のまま、試合は終盤に突入します。

田澤投手が7回のピンチを凌ぎガッツポーズ田澤投手が7回のピンチ
を凌ぎガッツポーズ

7回表のピンチには、正直言って目をつぶりました。先頭打者にヒットを許し、送りバントと四球で一死一、二塁とされると、さらにレフト前に落ちるヒットで満塁になります。大久保監督は、田澤投手にスイッチ。ゲームプランより早い登板になりましたが、田澤投手の表情は気迫に満ちていました。打席には、前の打席で二塁打を放った三番の金森宏徳選手。左右のコーナーを狙いながら攻め、カウントは2-3に。田澤投手が力いっぱい投げ込んだストレートは、148キロで真ん中高目に。

 あっっっっっっっ!!

誰もが思った瞬間、金森選手のバットは空を切ります。気迫で勝った田澤投手は、続く四番打者もピッチャーゴロに抑え、本当に厳しいピンチを凌いでくれました。

エースがここまで投げてくれたら、打線も奮起せずにはいられないでしょう。その裏、先頭の山岡剛選手は三遊間深くにゴロを打ち返すと、ウサイン・ボルト選手も顔負けのスピードで一塁を駆け抜け、間一髪セーフ。続く樋口渉選手がきっちり送りバントを決めると、JFE東日本も二番手投手にリレーします。打席には、この試合も途中出場している須藤宗之選手。二回戦では粘った四球で追加点を生み出したファイターは、いきなり初球をセンター前に。一、三塁とチャンスを広げたばかりか、相手投手にも大きなダメージを与えました。

須藤選手がヒットでつなぐ須藤選手がヒットでつなぐ

須藤選手 : 大会前のオープン戦では、なかなか結果を出すことができませんでした。でも、少しずつ調子は上がってきて、二回戦で打席にも立てたので、ここも思い切っていこうと思いました。相手投手には、東京スポニチ大会で抑えられていたので、何とか借りを返したいと。初球から振っていく勇気を持てたのが結果につながりました。

平馬選手の犠牲フライ平馬選手の犠牲フライ

このチャンスにバッターは平馬選手。昨年の大会首位打者はしっかりと狙い球を絞り、センターに大きなフライを打ち上げます。

山岡選手が決勝のホームイン山岡選手が決勝のホームイン

決して足で目立つことはない山岡選手も、三塁からウサイン・ボルト選手も顔負けの激走でホームにスライディング。ようやく1点を奪うことができました。

燃える三塁側スタンド燃える三塁側スタンド

さらに見逃せないのは、続く坂下選手の代打で登場した高卒ルーキーの井領雅貴選手です。ドーム初打席にもかかわらず、鋭くバットを振り抜くと打球はレフト前に。「ベンチ入りした選手は全員戦力」という大久保監督の方針の下、しっかりと準備をして結果を残すとは恐れ入ります。追加点はなりませんでしたが、井領選手のバッティングもチームのムードを大いに盛り上げてくれました。

こうなると、あとは田澤投手の独り舞台です。8回、9回とも3者凡退に討ち取り、1点を守り切ってくれました。

準々決勝、監督が選ぶMVP

木戸投手・平馬選手木戸投手・平馬選手

大久保監督 : 相手は二回戦で劇的なサヨナラ勝ちをしていますので、その勢いだけに注意しました。お互いにエースの先発ではなく、4~5点の勝負と考えていましたが、厳しい戦いになりましたね。相手に押されている場面が多く、投手のリレーも予定よりは少しずつ早くなってしまいましたが、4人ともよく我慢して無失点でつないでくれた。今日は先発の木戸、決勝犠牲フライの平馬と補強選手に助けられました。彼らをMVPにしたいと思います。

木戸投手 : ENEOS野球部の皆さんが温かく迎え入れてくれたので、補強選手というよりはENEOSの一員という気持ちでやっています。ほかにもいい投手がいる中、大久保監督が大切な試合の先発に起用してくださった期待に応えたいと思いましたので、まずまずの仕事ができてホッとしています。この素晴らしいチームで、今年も頂点に立ちたいですね。

平馬選手 : 田澤君は凄いですね~。本当に頼もしいエースです。3つ勝って盛り上がってきたというよりも、このチームは補強として合流した時からいいムード。宮澤選手のキャプテンシーが素晴らしく、僕も気持ちよくプレーさせていただいています。今日は野手陣で、田澤君を登板させずに勝とうと約束していたのですが、それができなくて申し訳ない。でも、最低限の仕事ができてよかったですね。あと2つ。絶対に勝ちます。

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